建築物環境衛生管理技術者(ビル管理士)国家試験の科目「建築物衛生行政概論」の内容について、解説しています。
「建築物衛生行政概論」の試験範囲
「建築物衛生行政概論」では、建築物における衛生的環境の確保に関する法律(通称「建築物衛生法」「建築物環境衛生法」「ビル管理法」)と、同法に関係する法令を中心に出題されます。
ここから、「建築物衛生行政概論」の試験範囲の内容を解説していきます。
日本国憲法第25条
日本国憲法第25条
①すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
②国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
日本国憲法第25条では、社会権のひとつである生存権を保障するとともに、国の社会的使命について規定しています。
建築物衛生法や同法に関係する法令の根拠となる条文です。
【参考ページ】日本国憲法第25条 – Wikipedia
世界保健機関(WHO)憲章
「健康」の定義
「世界保健機関(WHO)憲章」前文より抜粋
健康とは、完全な肉体的、精神的及び社会的福祉の状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない。
到達しうる最高基準の健康を享有することは、人種、宗教、政治的信念又は経済的若しくは社会的条件の差別なしに万人の有する基本的権利の一である。
上記は、日本政府による日本語訳です。
参考までに、下記のページに、公益社団法人日本WHO協会による日本語訳が掲載されています。
世界保健機関(WHO)憲章とは | 公益社団法人 日本WHO協会
保健所
保健所の数
令和4年(2022年)4月1日現在、全国の保健所の数は 468か所(うち、都道府県立の保健所は352か所)です。
最新の保健所の数を調べるには、全国保健所長会のページ(保健所設置数・推移)を見るのが手っ取り早いです。(厚生労働省のウェブサイトにも掲載されていますが、ページの場所が分かりづらいです。)
建築物における衛生的環境の確保に関する法律(建築物衛生法)
建築物衛生法の目的
第1条(目的)
この法律は、多数の者が使用し、又は利用する建築物の維持管理に関し環境衛生上必要な事項等を定めることにより、その建築物における衛生的な環境の確保を図り、もつて公衆衛生の向上及び増進に資することを目的とする。
建築物衛生法の沿革
建築物における衛生的環境の確保に関する法律(建築物衛生法)の制定と、それ以降の主な改正については下記の通りです。
昭和45年(1970年)建築物衛生法制定
建築物における衛生的環境の確保に関する法律(建築物衛生法)が公布されました。
昭和55年(1980年)建築物衛生法改正
一定の人的・物的基準を要件とする事業者の都道府県知事による登録制度が設けられた。
平成13年(2001年)建築物衛生法改正
事業者の登録制度における事業者の業種に、新たに「建築物空気調和ダクト清掃業」と「建築物排水管清掃業」の2つの業種が追加されました。
平成14年(2002年)建築物衛生法改正
「建築物環境衛生管理基準」の大幅な改正及び特定建築物の範囲の見直しが行われました。
平成22年(2010年)建築物衛生法改正
特定建築物の届出事項に、特定建築物の維持管理権原者の氏名などが追加されました。
令和4年(2022年)建築物衛生法改正
1人の管理技術者が同時に他の特定建築物の管理技術者にならないという原則が、廃止されました。
そして、1人の建築物環境衛生管理技術者が同時に2以上の特定建築物の管理技術者を兼任する場合の要件が緩和されました。
特定建築物の定義と範囲
第2条(定義)
1 この法律において「特定建築物」とは、興行場、百貨店、店舗、事務所、学校、共同住宅等の用に供される相当程度の規模を有する建築物(建築基準法(昭和25年法律第201号)第2条第1号に掲げる建築物をいう。以下同じ。)で、多数の者が使用し、又は利用し、かつ、その維持管理について環境衛生上特に配慮が必要なものとして政令で定めるものをいう。2 前項の政令においては、建築物の用途、延べ面積等により特定建築物を定めるものとする。
第1条(特定建築物)
建築物における衛生的環境の確保に関する法律(以下「法」という。)第2条第2項の政令で定める建築物は、次に掲げる用途に供される部分の延べ面積(建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第2条第1項第3号に規定する床面積の合計をいう。以下同じ。)が3000平方メートル以上の建築物及び専ら学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する学校又は就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成18年法律第77号)第2条第7項に規定する幼保連携型認定こども園(第3号において「第一条学校等」という。)の用途に供される建築物で延べ面積が8000平方メートル以上のものとする。一 興行場、百貨店、集会場、図書館、博物館、美術館又は遊技場二 店舗又は事務所三 第一条学校等以外の学校(研修所を含む。)四 旅館
学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する学校
第1条
この法律で、学校とは、幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校とする。
興行場の定義
第1条第1項
この法律で「興行場」とは、映画、演劇、音楽、スポーツ、演芸又は観せ物を、公衆に見せ、又は聞かせる施設をいう。
保健所の業務
第3条(保健所の業務)
保健所は、この法律の施行に関し、次の業務を行なうものとする。
一 多数の者が使用し、又は利用する建築物の維持管理について、環境衛生上の正しい知識の普及を図ること。
二 多数の者が使用し、又は利用する建築物の維持管理について、環境衛生上の相談に応じ、及び環境衛生上必要な指導を行なうこと。
建築物環境衛生管理基準
第4条(建築物環境衛生管理基準)
1 特定建築物の所有者、占有者その他の者で当該特定建築物の維持管理について権原を有するものは、政令で定める基準(以下「建築物環境衛生管理基準」という。)に従つて当該特定建築物の維持管理をしなければならない。
2 建築物環境衛生管理基準は、空気環境の調整、給水及び排水の管理、清掃、ねずみ、昆虫等の防除その他環境衛生上良好な状態を維持するのに必要な措置について定めるものとする。
3 特定建築物以外の建築物で多数の者が使用し、又は利用するものの所有者、占有者その他の者で当該建築物の維持管理について権原を有するものは、建築物環境衛生管理基準に従つて当該建築物の維持管理をするように努めなければならない。
特定建築物についての届出
第5条(特定建築物についての届出)第1項
特定建築物の所有者(所有者以外に当該特定建築物の全部の管理について権原を有する者があるときは、当該権原を有する者)(以下「特定建築物所有者等」という。)は、当該特定建築物が使用されるに至つたときは、その日から一箇月以内に、厚生労働省令の定めるところにより、当該特定建築物の所在場所、用途、延べ面積及び構造設備の概要、建築物環境衛生管理技術者の氏名その他厚生労働省令で定める事項を都道府県知事(保健所を設置する市又は特別区にあつては、市長又は区長。以下この章並びに第十三条第二項及び第三項において同じ。)に届け出なければならない。